しかし,上記のとおり,支出負担行為,支出命令及び支出はそれぞれ独 立した財務会計上の行為と解されるから,支出命令及び支出についての監 査請求は直接的にはこれら各行為の違法,不当を問題としているのであっ て,これらの各行為を違法,不当ならしめる事由として支出負担行為の違 法,不当が主張されているとしても,この点に変わりはない。
ただ,支出 命令及び支出が違法,不当であるかどうかということと,それに先行する 支出負担行為の違法性とは無関係ではないし,支出負担行為が違法である 場合に後行の支出命令及び支出がいわばその違法性を承継して違法になる という場合もあり得ることから,そのような場合には上記の審査において 支出負担行為について違法性が審査されるにすぎない。
被告の主張は,上記のように先行する支出負担行為の違法が後行の支出 命令及び支出の違法,不当に一定の影響を与えることを前提として,その 一方で,そのような主張が可能となるのは支出負担行為についての監査請 求期間内に支出命令及び支出についての監査請求がされた場合に限定され るというに等しいものである。
しかしながら,再三述べるように,支出負 担行為,支出命令及び支出をそれぞれ独立した財務会計上の行為とし,支 出負担行為の違法は支出命令及び支出を違法,不当ならしめる事情として 主張されているものと理解する以上は,その監査請求期間もそれぞれの行 為ごとに起算されると解するのが筋であって,被告が指摘するような問題 点は,先行する支出負担行為の違法が後行の支出命令及び支出にどのよう な場合に,どのような影響を与えるかという問題として検討されるべきこ とと思われる。
支出負担行為についての監査請求期間は経過しているにも かかわらず,その違法性について蒸し返し的に争われる余地があるとして も,それを理由として支出命令及び支出の監査請求期間の起算点を支出負 担行為時と解すべき必然性はないし,そのように解しなければ期間制限を 設けた法の趣旨に反するとまでは解し得ない。
エ以上のとおり,被告の主張は採用できず,支出命令及び支出に係る本件 監査請求は,監査請求期間内にされたものとして適法というべきである。
(1) 支出負担行為(本3 件協定の締結)についての監査請求について ア本件協定の締結は平成6年5月10日にされているから,この締結日を 起算点とすれば,本件監査請求は監査請求期間を経過した後にされたもの というべきであるが,原告は,支出がされた日(平成17年1月14日) を起算点とすべき旨主張する。
イそこで検討すると,住民監査請求は,財務会計上の行為又は怠る事実を 対象として行われるものであるところ,当該行為についての監査請求は, 当該行為のあった日又は終わったから1年を経過したときは,これをする ことができないものとされている(地方自治法242条2項本文)。
そし て,ここにいう当該行為のあった日とは一時的な行為のあった日を,当該 行為の終わった日とは継続的な行為についてその行為が終わった日を,そ れぞれ意味するものと解される。
本件監査請求においては,本件協定の締 結がその対象となる行為とされており,同契約の締結行為は一時的行為と いうべきであるから,これを対象とする監査請求は契約締結の日を基準と して同項本文の規定を適用すべきである(最高裁判所平成14年10月1 5日第三小法廷判決・判例時報1807号79頁参照)。
ウ(ア) 原告の上記主張は,財務会計上の行為がされても損害が発生してい なければ,監査請求において損害を補てんするため必要な措置を講じる ことを請求したり,その後の住民訴訟において当該職員に対して損害賠 償の請求(又は賠償命令)をすることを求めることができないという点 を根拠としている。
(イ) しかし,監査請求においては,その対象である財務会計上の行為又 は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り, 措置の内容等を具体的に明示することは必須ではなく,仮に,執るべき 措置内容等が具体的に明示されている場合でも,監査委員は監査請求に 理由があると認めるときは,明示された措置内容に拘束されずに必要な 措置を講ずることができる(最高裁判所平成10年7月3日第二小法廷 判決・裁判集民事189号1頁参照)。

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